ヴァンパイア王子~覚醒のblood~
「便利だな。いつでも人間の姿に戻れるのか?」


「いや、満月の間だけや。
狼になるのは満月だろうと月が見えなくてもなれるんやけどな。
人間の姿はそう簡単には戻られへん」


「それ逆じゃないか? 
狼人間は満月を見ると狼になるんじゃなかったか?」


「そやねん。
俺、死にかけとったから完璧な狼人間じゃないねん」


「だから犬みたいなのか」


「犬やない!狼やっ!」


怒った日向はレオから帽子を取り上げ、マントもはぎ取った。


「その靴も高そうやな!」


「俺に裸足になれってのか!」


二人がギャイギャイ言い合っているのを、道行くコクーンたちが横目で盗み見る。


そんな視線に気付いたレオは討論を止め、日向は逆に自分たちを見ていたコクーンに近寄っていった。


おいおい、何する気だよ。


レオは背中にひやりとしたものを感じながら日向の動向を見ていた。


すると日向は「なぁなぁおっちゃん」と気軽に話しかけ、おっちゃんと呼ばれた頭から二本の大きな角を生やした大男は目線を下に移した。


何しろ大男は身長が軽く二メートルは越すほど大きいので、いくら人間の姿となったといえど、日向が懐近くに寄れば下を見なければ顔が見えないのである。
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