ヴァンパイア王子~覚醒のblood~
「あ……ありがとうございます!」


子供を抱きかかえていた女が立ち上がり、レオと日向に向かって深々と礼をした。


「俺はなんもしてへんけどな。何があったん?」


女はまつ毛を伏せ、恐怖を押し殺すように語った。


「突然、あのヴァンパイアが現れて……。
コクーンを皆殺しにすると叫んだかと思うとその場にいたあの方を魔力で殺して……。
みんな逃げたんですけど、この子が転んでしまって逃げるに逃げられなくなってしまったんです」


あの方というのは、道路の真ん中で息絶えている岩男らしい。


なんとも理不尽で残酷な話に、レオと日向は怒りで言葉を失った。


「最近、人間の血が横行しているようです。
人間の血を飲み狂暴化したヴァンパイアが、コクーンを殺す事件が頻発しているんです。
私も気を付けていたんですが……。
もう外に出るのも怖いです。
私たちが安心して暮らせる街はもうない……」


そうして女は泣き崩れた。


レオと日向はかける言葉が見つからなかった。
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