ヴァンパイア王子~覚醒のblood~
「おはよう!」


女子生徒に声を掛けられ、茜はハッと我に返った。


「おはよう……」


鼻歌を唄いながら通学鞄を机に置いて、教科書を取り出している彼女に、茜は思い切って聞いてみた。


「ねえ、この席、誰が座ってたんだっけ?」


尋ねられた女子生徒は、一瞬何を聞かれたのか分からず目をパチクリとさせ、誰も座っていない茜の隣の机に視線をずらした。


「何言ってるの? 
この席は最初から誰の席でもないじゃない」


「そ……そうだったね」


「やだ、まだ寝ぼけてるんじゃないの~?」


女子生徒は声を立てて笑った。


茜も一緒になって笑う。


けれど心は、冷たい風が通り抜けていくようだった。


茜は机に肘をのせて、こめかみの部分を手で押さえた。


頭が重い。


何かを思い出そうとすればするほど、その重みは増していった。


自分の身体の中の大切な一部が切り取られたかのような気分だった。
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