ヴァンパイア王子~覚醒のblood~
……これだから苦手なのだ。


ヴラドの前に立つと幼子のように委縮してしまう自分が嫌だった。


「珍しいな、お前がここに来るなんて」


空気が震える。


ヴラドが一声漏らすだけで、感情を持たない全ての物――部屋に置かれた本や家具類までが緊張し縮こまるように感じた。


「……聞きたい、ことがあるんだ」


ほう、と蒼い双眼は興味深そうに笑った。



「俺は、何者なんだ?」


直球な問いに、ヴラドは何も答えず、ただしばらく黙って怜央の顔を見ていた。


その表情から全てを探るように念入りに蒼い双眼で見詰めた。

何をどう話そうか、この部屋に来るまで考えていた。


聞きたいことがありすぎて、自分の身に起こった不可解な出来事が余りに多くて、何を話したらいいのか考えあぐねていた。


そして見つけた問いが、自分は何者なのか。

その問いこそ、全てが繋がる欠けたピースのかけらだと思った。

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