ヴァンパイア王子~覚醒のblood~
「う……くっ……あっ…」


怜央は胸を抑え、上体を横に倒しながら悶え苦しんでいた。


「ああああ!!!」


突然悲鳴を上げたかと思うと、胸を掻きむしり、眼は天を仰いだ。


その瞳は血のように紅く染まり、どこからともなく風が吹いてきた。


「お、おい、どうしたんや?」


日向が怜央の肩に触れると、怜央の口から、この世のものとは思えない何重にも重なった低い声で『俺に触るな!』と怒声が響いた。


差し出した手を、乱暴に叩き払われた日向は、変貌していく怜央の顔を唖然とした面持ちで見つめた。


払われた手が、赤く腫れあがっていた。


物凄い力だった。


怜央の異変に気が付いた茜は、顔を上げ日向の胸から離れた。


「怜央……ちゃん?」


その声は震えていた。


目の前の怜央を、明らかに恐れていることが分かって、怜央の悲しみは一気に膨れ上がる。
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