ヴァンパイア王子～覚醒のblood～

『……俺にっ……近寄るなぁぁ！！』


怜央が叫ぶと、生徒会室の窓ガラスが振動して、大きな音と共に全て粉々に砕け散った。


「キャーーーーー！」


日向はガラスの破片から茜を守るように抱きしめた。


幸いガラスの破片は身体に当たらず怪我はない。


けれど、突然割れた窓ガラスに怜央が関係しているということは一目瞭然だった。


冷たい風が吹き、校庭の木々が不気味に揺れ始める。


快晴だった空は曇天で覆われ、やがて雷と共に激しい雨が降り出した。


怜央の双眸は紅く揺らめき、艶めくような漆黒の髪が風に吹かれサラサラと靡いていた。


ぞっとするような、美しい容貌だった。


紅い瞳は悲しみの色を濃くし、割れた窓ガラスから横なぶりの雨が当たり、怜央の身体をしっとりと濡らしていた。


孤独が怜央を、より一層美しく際立たせていた。


その顔は、妖しく、残酷に、見る者を惹きつけ、惑わす。