例えば私がアリスなら


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「………………え、誰?」




一人のはずなのに声がした。
しかも知らない人の声。


そういえば落下が止まっている。私はひんやりと冷たい地面に寝転がっていた。

いつの間に?
というか、落ちてきたはずなのにどうやら無傷のようだ。
私ったら丈夫過ぎるでしょ……。



「…………痛くない」

ポロリと漏れた感想。



「いや、痛いよ。その格好」


…………着ぐるみか!
このけなし言葉は月江だな!?とか思ったけど、聞き覚えの無い声だった。

彼よりは幼い感じの声。



「こら!そーいう失礼なことは言っちゃいけないんだよ!」


そしてこれまた幼い、というより可愛らしい声。

上半身を起こして声がした方を見る。
それらは数メートル先にあった。



澄んだ水色の空の下、草花の香りがする地面の上。

横に長いテーブルに薄桃色のテーブルクロス。
上に並ぶのはわりと高価に見えるティーカップやティーポット。磨かれて、日の光を反射する食器、スプーン、フォーク。
美味しそうな焼菓子やケーキ。ふわりと甘い香りが鼻をくすぐる。
そして色とりどりの可愛らしい花が飾られている。


ぱっと見、野外のお茶会って感じ。

でもこれまでお茶会なんて小洒落たものは生で見たことなかった。


目の当たりにしたことはないのに何故これがお茶会だなんて分析できたのか。



だって、あの物語で見た挿絵にそっくり。



不思議の国のアリスのイカれたお茶会。




「……大丈夫?こんなところでお昼寝でもしてたの?」



さっきの可愛らしい声が傍で聞こえて、振り向くと女の子が隣に立って私の顔を覗き込んでいた。
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