例えば私がアリスなら
羨ましいほどくるんと愛らしい大きな目に、ふわふわパーマのかかった柔らかそうな茶髪。
フリルが沢山付いた若干ロリータっぽい服が、可愛らしい彼女にとてもよく似合っている。
そして頭に揺れる、人間にはあるはずのない茶色い兎の耳。
……まさか、まさかね。
あるはずないんだけど、でもお茶会らしき会場に兎の耳。
もう私の頭には一つのイメージが浮かんで、消えてくれなかった。
「…………三月兎?」
ああ、つい言ってしまった。
初対面の子に女子高生がこんなこと言うなんて、恥ずかしい。
絶対変な人だと思われた。いや、こんな格好してる時点で十分変な人だけど。
しかし、変なものを見る目で見られると思いきや、目の前の女の子は驚いたようにパッチリと大きな目を更に大きくした。
「……え、え?あなた、ノッ……私のこと、知ってるの?」
「…………え?」
え、ビンゴ?
私達は二人して固まってしまった。
いや、言っといてアレだけどさ。
三月兎?って聞いてYesと返ってくるなんて、思わないでしょう。
この子、意外にノリがいいのかな?
「ちょっ、ねえアルディ!
この人……あ、兎さん?って、あなたの知り合い?」
女の子は慌ててテーブルに向かって大きな声を飛ばす。
その先にいたのは、お茶会の席に着き、こちらを見たままきょとーんとしている男性。
普段は見掛けることのない大きなシルクハットが妙に印象強い。
彼はあまり目立たないシルバーの縁の眼鏡を指で上げながら首を傾げた。
「はて……見覚えは無いですが」
「……あなたは帽子屋?」
「おや、ご存知でしたか。
となると僕と貴女は知り合いなんですか?」
これまた肯定された。
……まさかこの人達、コスプレ中?アリスの。
はたまた私達みたいに劇の練習とか。
その辺はよくわからないけど、三月兎に帽子屋ときたら残るは……
「無駄だよ。アルディに聞いてわかるはずないじゃん」
テーブルで頬杖をつく少年を指差し、言い放った。