例えば私がアリスなら



白兎といっても決して私じゃない。
私は白兎と言う名のピンク兎だ。


いつの間にやら紛れ込んでいた可愛らしいソレに揃って呆然としていると


「あ、可愛いーっ!うさぎだあ!」

後ろからひょこっと出てきた結菜が白い兎をヒョイと持ち上げた。


「あ、白兎がアリスに捕まった」

物語終了じゃないっすか。


抱き抱えて、優しい手つきで兎を撫でる結菜。ふわふわした毛並みが気持ち良さそう。

それにしても可愛い結菜には可愛い小動物がよく似合うね。
なんかほんわかフィルターかかっててお花が舞ってる感じで癒される。


「先輩が持ったら獲物を捕らえた獣ですもんね」

月江、そろそろ噛み付くぞ。



「まあ、可愛いけどさ、この学校って兎飼ってたっけ?」

やっとこさ正統派ツッコミを入れてくれた咲斗先輩。
突拍子無い登場に思考回路麻痺してました。


「飼ってない。誰かが連れ込んだんだろう。
生意気にも服着てるし」

部長が目つき悪くても兎さんはキョトンとしてるだけ。
ちっこいのに強いな。

そんな肝が据わっている兎は、赤いベストを着ていた。
可愛い。最近はペットにオシャレさせるの流行ってるもんね。


「よくばれなかったなあ。
いくら兎を連れ込んじゃ駄目って校則が無いからって、こんな堂々と校内散歩させなくてもいいのに」


生徒会に入ってる先輩らしい意見。
そんな正しい言い分を述べながらも優しく兎の頭を撫でて表情を和らげる。
……兎に嫉妬。


「まあ先輩よりよっぽど白兎らしいですもんねえ」

妙にタイミングいいコメントばかり漏らす月江、キミ、私の心読んでる?
読めるならもっと私が穏やかでいられる台詞言いなさいよね。



そんな白兎らしい白い兎さんは、私達の注目を浴びながらも鼻をヒクヒクさせながら一点を見つめている。



「……真琴、見られてないか?」

「奇遇ですね部長、私もそう思ってたところです」



結菜の腕の中から、赤い瞳がジッと私を捉えていた。



「……一応兎同士、仲間だと思ってるんじゃないですか?」

そういえば私、兎だったっけ。(ピンクの)
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