当たらない天気予報


一瞬も迷わず、翔子が声高に答えた。


「…ティファニー?なんで?」


ギャル系でもなく、どちらかと言えば少々大人しめの翔子の口からブランドの名前が出てきたことに些かびっくりだ。


「眞子(まこ)がね、可愛いネックレスしてたの。彼氏がティファニーで買ってくれたんだって」


眞子は翔子と同じクラスで、翔子の友達。


「ティファニーって…高校生が入っていい店なのかよ?眞子の彼氏は大学生だからいいかもしんないけど…」

「うーん…でもそんなに高くないネックレスもあったよって言ってたし…」


片足はローファーのままで、片足を内履きに突っ込み、翔子が首を傾げて固まる。
ふわふわ、ふらふらした性格の翔子が、ここまで頑なになるのはとても珍しい気がする。


「…わかったよ!翔子、ティファニーな!」





とは言え、だ。
ティファニーのネックレスっていくらくらいするんだ?
大学生が買えるかもしれないけど、高校生が買えるものなんてあるのか?
まして俺は親から許されていないからバイトもしていない。
1ヶ月の小遣いが5千円。
念のためと先々月から貯めておいたお金の他、恵美から貰っていたお金の蓄えが4万ほど。
俺の貯蓄、計5万円なり。
お金足りるかな…微妙だな…。


「…恵美なら…」


少テストをさっさと終わらせた俺は、窓の外の中庭を見つめながら悶々とそんなことを考えていた。
とりあえず、ティファニーの相場を調べなきゃ…。
殴り書きで答えを書いたテスト用紙の上に突っ伏して、目を閉じた。
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