。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
びっくりし過ぎて声も出ないってこのことだ。
金縛りにあったように身を硬直させ、それでも足の下から恐怖が這い上がって、あたしの全身に汗が吹き出た。
あたしは霊感とか全くない鈍感女だけど…ま、真昼間から……ゆ、幽霊と遭遇しちまった……??
雪斗のことを考えてたから、一瞬雪斗の霊が出たのかと思ったけれど、よく考えればこの声は女だ。
くすっと低く笑う声がして、
「びっくりしたぁ?」
と女の声が耳元で囁く。ぞっとするぐらい色っぽい声だ。
あたしの肩から回った腕は確かに人間のものだったけれど、真っ白で、この暑い日だって言うのに体温をまるで感じられなかった。汗もかいてない。
まるで死人のようだ―――
そのことにまたもあたしの全身が震え上がる。
「鶴と亀が滑ったなんて縁起が悪いよねぇ。しかも後ろの正面だぁれってわけわかんない」
女がクスクス楽しそうに笑うと、そいつの着ている着物…(だと思う)袂があたしの両脇でふわりと揺れた。
白い着物だ。
おまけによく見たら女の手には長くて赤い数珠が握られていた。
じらじゃらと鳴る音はどうやら数珠が擦れる音だったみたい。
そしてその数珠が握られている白い手の指先の爪も真っ赤なマニキュアが塗られている。
一種異様な光景にあたしは居竦んだ。
怖い