。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。


緊張した面持ちで会長室の扉をノックすると、


「入れ」と叔父貴の重低音が返事を返してくれた。


「叔父貴~……来たよ」


控えめに顔を出すと、でっかい会長机の回転椅子に腰掛けた叔父貴が顔を上げた。


広い会長室には叔父貴の他は今誰も居ない。


「お、お邪魔しまぁす」


小さな声で挨拶して、おずおずと入り込むと、叔父貴は回転椅子の背に深く背をあずけ目を閉じて、眉間を指で揉み解しているところだった。


叔父貴……疲れてるのかな…


今日は何となく…いつもの覇気がない。そう言えば顔色も悪い気が―――


だけど


「早かったな」と穏やかに微笑んだ叔父貴はやっぱりいつもの叔父貴で……


考えすぎかな?なんてすぐに考えを改める。


あたしが応接セットのソファに腰掛けると、秘書のお姉さんがすぐに紅茶を出してくれた。


ついでにケーキも出してくれる。


オレンジやグレープフルーツがたくさん乗ったおいしそうなタルトだった。


秘書のお姉さんは紅茶とタルトを出すと、またすぐに部屋を出て行ってしまった。


あたしと叔父貴の二人だけ。


あたしの前のソファに腰を降ろして足を組みながら、叔父貴が切り出した。


「進路相談…だったな」


その顔はやっぱりちょっと疲れていそうで、昨日の今日だって言うのに頬が少しこけた気がする。


よっぽど忙しいのかな。鴇田も不在だし。会社を動かすってやっぱ大変なんだろうな。


ぼんやりと思いながら、あたしは叔父貴を見上げた。




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