。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。


少し距離を開けてキョウスケも腰を降ろす。そしてちょっと考えるようにして、


「何か飲み物でも……」と立ち上がろうとしたキョウスケを、


「いい!あ、あたしは……いいから…」と言ってあたしは強引にキョウスケを座らせた。


「タバコいいですか?」とキョウスケは無表情に言って、あたしが頷くと、近くにあった灰皿を引き寄せた。


100円ライターで火をつけようとするけど、火はなかなか点かないようだ。


ちっ


短く舌打ちを鳴らし、珍しく苛立った様子でキョウスケは火を点けるのを諦めた。


思えばこいつがあたしの前でタバコ吸うなんてほとんどないことで―――


こいつもそれなりにあたしの言葉を想像していたに違いない。


「マッチ。これ、使って?」とあたしは電話台の下からマッチの箱を取り出した。


「すんません」キョウスケは恐縮しながらも素直に受け取った。


マッチでタバコの先に火をつけると、キョウスケは長々と煙を吐いた。


その手馴れた動作に昨日今日吸い始めたんじゃないことを知る。


思えば―――あたしキョウスケのこと良く知らない。


勝手に想像して、勝手に付きまとっていたあたしにキョウスケはいつだって兄貴のように優しく接してくれた。


「キョウスケ……あのね……」


言い辛そうに唇を引き締めて、あたしは正座した膝の上でぎゅっと拳を握った。


「分かってます。お嬢が言いたいこと」


そう言われてあたしは顔を上げた。


キョウスケは寂しそうな、悲しそうな―――でも一言で言い表せない複雑な表情を浮かべてあたしに微笑みかけていた。


頭がいいヤツだから、あたしの考えなんてお見通しだろうけど―――





それでもあたしは真正面からこいつに答えたい。




そう思って口を開いた。





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