。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。



俺は響輔と長いから大抵のことは分かるつもりだけど…時々ホントに何を考えてるのか分からないときがある。


「俺はお嬢のことを諦めへんよ。今はまだ戒さんからお嬢の気持ちを引き剥がすことは難しいと思うけど、そのチャンスを狙てる」


一年も片思いしてたんや。そんな簡単に手放せるか。


響輔はそう続けて、ちょっと挑発的に俺を睨んできた。


「それに俺はお嬢に嫌われてないみたいやし。


戒さんのことは『二重人格だし、態度でかいし、強引だし、寂しがりだし、俺様だし、エロいし、ハゲだし短足だし性格悪いし(←そこまで言ってない)って言うてましたよ。俺にもチャンスありやないですか?」


二重人格?エロい!?しかもハゲで短足!!?


ショック!!


あいつ俺のことそんな風に思ってたのか…額を覆って俺は吐息をついた。


とまぁそんなことは今いい。


問題はイチだ。


「んで?そのイチって女について何か分かったことは?」


「大半がまだ謎に包まれたままやけど、イチは一人で行動してるわけやない。共犯者が居る。



それも男の」


真剣な顔をして天井を睨んでいる響輔。


共犯者―――……男………?


「カラオケボックスに居たのはイチだけやなかった。男のツレも一緒やった」


「男のツレ―――?」


俺が目をまばたくと、響輔は言い辛そうにわざとらしく咳払いをし、


「カラオケボックスで男と抱きあっとったんです。行きずりの男とは思えへん親密な関係ぽかった」


「親密……イチの恋人か?」


「……さぁ、そこまでは……まぁ全てを知るのは次の機会やな。と言うわけで、俺はお嬢のこと諦めへんので、よろしゅう」


響輔はちょっと手を上げると、言いたいことだけ言って満足したのかゆっくりと目を閉じた。


「ちょぉ!響輔っ!」俺は喚いたが、響輔から定期的な寝息が聞こえ、


俺も諦めて再び響輔の肩に頭を置いた。





俺は諦めへん。



響輔の言葉を頭の中で反芻する。




正直―――俺は響輔がここまでがんばるとは思わなかった。


いつだって一歩下がる性格だったし、バイク以外に執着しているのを見たことがなかったから。


響輔の穏やかな寝顔を眺めて、俺はふっと笑った。





「俺かて負けへんよ」





響輔の肩に額を当てると、響輔の想いと同じ熱さの体温が―――伝わってきた。






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