。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
もしかして…もしかしなくても絶対今の話聞かれてたよなぁ。
恥ずかしくてあたしは思わず俯いた。
だけどドクターは気にしていない様子。点滴のパックをセットしながら、リコの方を穏やかに見て、
「お嬢さん、別に同性に恋心を抱くのは悪いことではないですよ?あなたの言った通り、あなたの年代の子たちは恋に一生懸命だ。
その素晴らしい日々はそのときの財産で、私なんかが今さら経験できるものでもない。
悩んだり迷ったりするのもまた経験のひとつ。悪いことではないし、後悔することもない」
あたしたちは目を開いてドクターの言葉に耳を傾けた。
ドクターの言葉が一言一言胸にストンと落ちて、静かに染み渡っていく。
こいつは…ただの変態野郎だと思ってたけど、何かすっげぇいい言葉。
妙にじんと来て、目頭が熱くなった。リコの手にぎゅっと力が入った。
顔を上げると同じようにリコの目尻に涙の光が浮かんでいる。
「恋に悩む少女たちに。私からささやかなプレゼントをあげよう」
ドクターはごそごそと鞄の中をまさぐると、
「恋に効くクスリです。これを食べればたちまち元気になるでしょう」
何だよ!恋に効くクスリって!妖しげな媚薬だったりするんじゃないだろうな!!
だけどそう言って手渡されたのは―――
なんてこと無い―――イチゴ味のキャンディーだった。
パッケージを破って口に入れると、
その飴は甘ったるくて、でもほんのりしょっぱかった。
何で飴がしょっぱいんだろう―――そう思ってたけど、
なんてことない。
それはあたしの目から流れ落ちた涙の味だったんだ―――
恋に味があるんなら、きっとこんな感じなんだな。