。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅱ・*・。。*・。
俺はイチの顔を覗きこんだ。
「キョウスケなんてやめておけ。あいつには、お前を幸せにすることなんてできない」
俺が台詞じみて言うと、おもしろそうに笑って、だけどすぐにイチは表情をちょっと歪めた。
「でも、もう好きになっちゃたもん。無理」
イチが呟いて俺は眉間に皺を寄せ目を細めると、イチは小鳥のように笑った。
その笑い方が少しだけ――――お嬢に重なった。
「不機嫌になった。やっぱイヤなんじゃん?」
「俺は元からこうゆう顔だ」
俺がそっけなく答えると、イチは興ざめしたようにため息をついた。
「さっきの話は冗談。あたしのタイプじゃないし。第一会話がかみ合わないもん」
「……だろうな、お前とキョウスケが楽しそうに会話してることを俺も想像ができん」
イチは目を細めて俺を見上げると、面白そうに口の端を歪めた。
「でもさぁ何で虎間 戒と朔羅の婚約はあっさり許しちゃうの?変なの」
「あれは会長が望んだことだ。それに俺はお嬢が誰に恋をしようが、誰と結婚しようが関係のないこと」
そっけなく言ってグラスに口を付けると、
「じゃああたしも龍崎会長にキョウスケとのことを認めてもらえれば、付き合ってもいいってこと??」
とまたもイチが楽しそうに笑う。
「認めるもなにもそこまで口出ししんだろう」
たぶん―――…
だが100%とは言えないな。何せ今は青龍と白虎の盃の件でぴりぴりと殺気だっている。
そんな中、会長が何も言わずにイチとキョウスケとの交際を認めるか……
以前の俺のように。
たった一人の女も幸せにできず、
引き裂かれるまま、命令されたままの道を進むしか選択肢がなかった俺みたいに。