軽業師は新撰組隊士!
暗い夜道を、月明かりだけを頼りに歩く。
川に架かる橋を渡る。
楓はふと、月を見上げる。
少しだけ欠けている月をみて、綺麗だと、そう思った。
そのとき―――…
カチャリ、と音がする。
音がした方向を見てみると、沖田が抜刀の準備をしていた。
「総司さん?」
「組長?どうしましたか?」
楓たちは沖田に問う。
「敵…でしょうね。挟まれてます。」
そう言った沖田の顔に、笑みはなかった。
「僕は、気づいてますよ。出てきたらどうです?」
沖田がそう言うと、五人の敵が、楓達の周りを囲んだ。
楓は急いで刀を抜いて、構える。
生憎、今は橋の上。
はさみうちにされては、逃げ道などない。
いや、新撰組の隊士ならば、どんな状況でも逃げてはならない。
敵前逃亡は、新撰組ではしてはならないからだ。