軽業師は新撰組隊士!
克は諭すように話し出した。
「人生を道と表す者は多いがの、我は違う。我は人生を川だと思うとる。」
「う、うん。」
「川は幾多に別れて流れてゆく。それを今の状況に例えたらのぅ、自然に変えてしまうことは、本来流れてゆくはずの所から、少し外れたところを流れてゆくのと同じ。」
楓にも、だんだん意味が分かってきた。
「うん。」
「それでもまだ自然の摂理に従っとる。だがの、故意に変えてしまうことは、川を逆流させてしまうことに等しい。」
つまりは、自然の摂理に従っていない。
だからダメだと。
自然の摂理を壊してしまっては、世界が機能しなくなるからと。
克はそう言っているのだ。
「のぅ、楓。覚悟は決めたかの?我がつれてきておいてなんだが、世界は甘くない。最期まで生きると、先が見えない世の中で生きると、覚悟を決めんといかん。」
「―――分かってる。お父さん。」
覚悟と勇気は異なるが似ているものだ、と楓は思う。