軽業師は新撰組隊士!



原田の言葉に、俺は頷く。

そうだ、アイツは……女なのに、袴を穿いて、刀を持って、人を斬って

泣いて、立ち上がって、俺らのところまで来ようとしている。


「アイツは…、楓は、お前のこと、怒ってねぇ、怒らねえ。」

「あぁ、嬢ちゃんはそういう子だからな。」

「でも、悲しんじゃあいるはずだ。このことが片づいたら、何か言ってやれ。」


原田は頷いた。
そして、


「…、あーあ、やっちまったなぁ。んで、犯人の目星はついてんだろ?」


と、軽い口調で言った。

俺はフッと笑う。
コイツの切り替えの良さが好きだ。


「当たり前だ。アイツを傷つける奴は、許さねえからな。」

「あーあ、お熱いことで。お似合いだよ、土方さんと嬢ちゃん。」

「まだ片思いだがな。」

「めっずらしーよな。土方さんが片思いなんて。ま、嬢ちゃんは鈍感なんだから、頑張れよ。」

「お前も大概、俺に敬語を使わねえな。」


そう言って苦笑すれば、原田はニカッと笑う。
今更だろ、というように。


――それでいい
笑っとけ

そうすりゃ噂なんて馬鹿らしくなるさ。


俺は原田に背を向け、歩き出した。


「土方さん、ありがとな。」


聞こえた原田の言葉に、前を向いたまま手を振った。



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