軽業師は新撰組隊士!



*****


俺は今、楓の部屋の前にいる。

襖をソッと開けて中を見ると


「寝てるか…。」


布団も敷かずに寝ている楓の姿があった。

楓の父である克の姿は見えないが、どうせ近藤さんに捕まってんだろうと予想した。


“来るなと言うておろうがー!”

“何故だい!?マタタビだよ!?マタタビ!”

“元は人間じゃ!そんなもんに興味など示さんわ!”


「……、ドンピシャだな。」


遠くから聞こえた一人と一匹のやり取りに、呆れた。

しかし、今は克がいなくてよかった。

なぜなら


「…泣いた、よな。」


寝ている楓の頬に、涙が伝った跡があったから。


俺は楓の頬を撫でる。

涙の跡が、無くなればいいと思いながら。


「結局、俺はお前を泣かせてばかりだな…。」


『俺はお前を泣かせない』と、約束していたにも関わらず。




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