AKIRA

 ドクン、と鼓動が高鳴った感じがした。会った瞬間は軽薄そうな奴って思ったけど、今の、そいつの眼が、あまりにも真剣すぎて。

 俺の周りの男どもは、みんな遊びが一番で、毎日ゲームやテレビの話なんかしてて、なのに、こいつは自分のやりたい事、こんな風に言えてて、なんかすげぇって言うか。

「なんで、そんな強くなりたい訳?」

「ん? ああ、倒したい奴がいて」

「は?」

「俺、始めはテニスなんかって思ってたんだけど、俺の姉ちゃんがテニスやってて、それでさ、試合見て、姉ちゃん負けて、泣いてたから……」

「へ、へぇ」

「すごく悔しそうに……だから、俺が仇を取ってやるって思ってさ」

「……仇って」

「んん、でもよく考えたら、姉ちゃんだろ? 既に中学行ってるし、だから俺がどんなにやっても、その相手とは試合できねぇって思って」

 少し恥ずかしそうに、笑って俺を見る。

「考えなくてもわかる事じゃん、馬鹿じゃねぇの?」

「ん、馬鹿だった」

「変な奴」

「でも、やってるうちにテニスが楽しくなって、ほかの誰より熱は入ちゃってさ」

「やっぱ馬鹿だ」

 そう言うと、そいつは思いっきり頬を膨らませて「うるせぇよ」と呟いた。でも、すぐに笑顔に戻る。

「お前、南小だろ? 何年?」

「五年」

「俺と同じだ、俺はアキラ、よろしく」

「え?」

 更に、心臓がうるさくなった。

「なに?」

 きょとんとして、アキラが聞き返してくる。

「お、俺も……アキラってんだ」

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