AKIRA
「は? なんでだよ。折角うまくなってきてんのに、もったいない。夏休み終わって学校違うとかだったら気にすんなよ。どうせ家近いんだろ? いつでも……」
「うるせぇよ!」
「アキラ?」
「俺は、初めからテニスなんかやる気なかったんだ! なのにお前が無理やり誘うから、来てやってたんだよ。察しろよ!」
「もしかして、嫌だった?」
そう言った途端、アキラの表情が曇った。眉間にしわ寄って、怒ってる。
だよな、当たり前だ……俺、今なんかすげぇ事口走った気がする。でも、止めらんない。
嫌じゃねぇ、全然嫌じゃねぇ。むしろ嬉しかったってのに……。
アキラは、もう一度ため息を落として、俺に背中を向けた。その背中が『じゃぁ帰れば?』って言ってるようで、苦しくなった。
「俺、もう来ないから」
そう呟いて、俺もまた、アキラに背を向けた。なんか、もう、終わり、なのか?
苦しくて息が出来ねぇ……今にも、心臓、止まっちまいそうだよ。でも、振り向く勇気ない……俺、なんか酷い事、言ったから……。
長い沈黙に耐えきれなくて、俺は歩き出した。
どんどん背中が離れて行くのを感じる。でも、アキラが言った言葉が、俺の耳に届いた。
「俺……待ってるから、ずっと」
そう言ってくれたんだ。でも、俺の足は止まらなくて、どんどんどんどん、コートから離れて行って……。