夏の記憶
タケルは「まいったか」といった表情でわたしの方をみた。



「【こんじょうのわかれ】?ってどういう意味なの?」



その時は決してタケルを追い詰めるつもりはなく、わたしはただ純粋にタケルにそう聞き返した。



「それはさあ、なんか…だから…こんじょうのわかれなんだよ」



汗で前髪が張り付いた額をぬぐって、タケルは急に口ごもる。



「ばっかじゃん。ちゃんと知らないくせに言わないでよね!」



形勢逆転したわたしは、タケルに言い返す。



「ちゃんとしってるよ!じゃあ優奈は【こんじょうのわかれ】の意味わかるのかよ。」



今思えば、このタケルの返しはとんだ逆切れもいいところなんだけど、幼いわたしもすぐむきになって言い返した。



「わかるよ!!お母さんがいってたもん!!」



「じゃあゆってみなよ」



「しってるけどタケルには教えないもん」




「やっぱり知らないじゃん」
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