Love Box:)
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「――ご予約の井上様でいらっしゃいますね。こちらへ」
名前も言っていないのに、エントランスに通された途端、
ボーイが井上さんを確認すれば、深々したお辞儀と共に席へと案内する。
一度も、訪れたことのないような一流レストラン。
珍しく履いた高いヒールに覚束ない足取りで一生懸命に、長身の井上さんについていく。
「座って、」
ボーイに椅子を引かれ、向かいの井上さんには左手で促され、戸惑いながらも着席。
『…こんな、高そうなトコ…。いいん、ですか?』
「気にしないで」
サラリ、フィンガーボールに両手を浸しながら、下を向いたままの井上さんは私の遠慮を制した。
長い睫毛が、瞬かれ、漆黒のそれにドキリ、また鳴る胸。
(…いちいち、五月蠅い)
煩わしくなるほどに彼の一挙一動、その度に動く情動は正直、面倒だ。
注文を済ませると、心なしか口端にうっすら笑みを浮かべて、私を眺める井上さん。
僅かに傾けるその首の角度も、その視線の這わせ方も、色香満載。
浴びているこちらは火がでそうに、熱い。
それになんだか品定めされているようで、この服で良かったかな、なんて下らないことを思う。
不安で自然に、眉が寄る。