Love Box:)
(…騙され、た?)
井上さんは私が緊張して苦しんでることも、全部全部、解ってて…わざと。
(…わざと)
「緊張、しないで?」
クスリ、今度は左右対照に、美麗にあげられたゆるやかな口角。
それはとても、優しかった。
それこそ惚れ惚れする程に…。
(…騙されちゃ、ダメだ、やっぱり、ダメだ)
ころころ変わる、表情。
どれが本当の、あなたですか?
既に体温が沸点の私は、平静を保つのだけで精一杯です。
『…緊張は、します。井上 達矢が目の前に、居るんです』
「やだな。なんだか、その言い方」
(…あ、)
また、だ。また痛みを堪えるみたいに悲痛な苦笑。
――ねぇ、井上さん。
私は5年間あなたを想ってきました。
でも実際にこうして対峙してみると、私の知らないあなたばかりです。
――ねぇ、井上さん。
(…あなたって、どんな人ですか?)
「…左手、だして?」
唐突に言われた一言に、慌てて過去に手放していた意識を引き寄せた。
『、左、手?』
「そう。左手」
なにをするのかと、訝しみつつ、膝に重ねた両手を解くと恐る恐るテーブルの上に左手を置いた。