Love Box:)
「綺麗な指、…何号」
唐突にポツリ、吐き出された言葉。
疑問形でないその言い方に一瞬、問われてるのかどうか解らなくなる。
『7号、です、けど…』
促されるような視線に、答えれば良いんだとわかった。
井上さんはふーん、なんてさほど興味もなさそうに僅かに触れ合っていた指先を離した。
(…わ、)
それまで金縛りにあったようだった左手が自由になって、即座に引っ込める。
離された途端、指先に伝わる冷たい空気は急に現実味を帯びて、私の脳に伝わった。
(…わ、手、手握っ、た?)
制御できない脳内は、ぐちゃぐちゃに溶解。
「―――桜さん、」
フルコースの料理も終盤。
会話の苦手な私は始終ぎこちない相槌をうつばかりで。
折角の高級料理の味はほとんどわからなかった。
『…なん、ですか』
「下の名前はなんていうの」
小首を傾げて、子供みたいに無邪気な表情で尋ねてくる井上さん。
そんな表情もできるんだ、と。また「新たな井上さん」を見つけた。
『名前は…』
「、」
『桜、香です』