Love Box:)
『―――好きな人は、居ますか?』
(…いまでも、)
とは、言えなくて。
気付けばただただ口をついて出た言葉。
どこか遠くを見つめる私が、なるべく気遣うよう静かにかけた、それ。
ピクリ、反応した彼の肩が、揺れた。
(…いまでも、)
(…居ますか?)
「―――居る、よ」
消え入るような声で吐き出されたそれに、がくん、衝撃という名の複雑な感情。
がっかり、と安堵。その二つが蠢くこの気持ちは…
ゆらり、橙色に照らされた井上さんのワイシャツを見ていた。
『…そう、なんですか』
やっぱり、貴方が分からない。
貴方は、近いようで遠い。
私の知っている先輩と、目で見てわかる様々な表情、態度。
私には、見極められるのかな。
「…香、は居るの?」
今度は弱々しい井上さんの声が、寒いようで温かい部屋に響いた。