Love Box:)







「キミは…」

『え?』


突然呟いた井上さんに驚いて思わずその顔を正面から見てしまった。



(…あ、れ)



彼のその表情は私にとってまた新しかった。

今までは勿論、今日だって一度も見せたことのない類――純粋無垢で、子供みたいな。




「キミは…香はそれで幸せに、なれるの…?」


目を見開いてそんなことを訊いてくる。

計算高く格好つけたような余裕も、かといって優しい笑顔でもなくただ…

ただ思ったことが口をついて出たように無表情だった。



(…そんなこと、先輩に言われてもなぁ)



幸せになれるの?。その言葉はそのまま井上さんに返したい。

自分だって何年も「みちる」を想って不毛な恋をしてるじゃないか。

いくら先輩でも待ったって無駄なのに。だって彼女は…



(…「みちる」は結婚したんでしょ?)



井上さんがその事を知らないわけがない。だからもしかしたら…

もしかしたら、もうとっくに気持ちを切り替えて過ごしてるんじゃないかっ、て。



(…多分きっと)



初めて電話で話したときから私は、心のどこかでそんな淡い期待を抱いてたんだ。

だからさっき好きな人がいる、って彼が言った時…



(私は本当はどう思って…、)



自分が何を彼に求めてるのか解らなくなる。

あんなに人気者なのに一人だけを見つめて想い続ける、一途な井上さんに恋をした。

無理に振り向かせるわけでもなく、なんの利得もないというのに。

人の幸せを優先する、彼に…。

そう、私が好きになったのは「みちるを好きな井上さん」だった。

それなのにいざ、まだ彼女が好きなんだって知ったとき、

今でもあの時の先輩のままだって少しホッとして…

でも同時にガッカリした。



(…なんだ、私矛盾してるじゃん)



――私は彼に何を求めてるの?













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