Love Box:)
「、ちょ、」
『…ご迷惑、おかけしました』
それだけ言って頭を下げると、鞄を引っ付かんで玄関を目指した。
(…っ、早く、早く、)
(…この部屋から去りたい)
「待って、」
井上さんが私を呼ぶ。
だめなの、だってもう涙を堪えるのは限界で。呼吸をするのも、苦しいくらいに。
「…待て、って、」
パッ、と片腕を引かれた。それでも彼の顔は振り返らず、片足を靴に突っ込んだまま停止する。
『帰らせて、ください、』
「なんで」
『、』
「帰したく、ない」
そっと振り返って呆れ半分に彼を見た。その目は真っ直ぐに私を見据えていて、それが余計に、辛い。
何でそんな勝手なことが言えるのだろう、この人は。
(…みちるが好きな癖に、)
『っ、勝手』
「え?」
『勝手、ですよ、先輩』
「何が」
もう、嫌だ。引かれた左手がもどかしい。
(…離して、)
(…離さない、で、)
矛盾だらけの私の心も、嫌だ。
『――好き、だからです』
「、」
(…あ、)
言って、しまった。