Love Box:)
さっきから、墓穴ばかり掘っている。
立ち去ろうと、この想いから逃れようと、必死にもがけばもがくだけ、さらに足をとられては、深みへと嵌って絡まる。
嗅覚を、視覚を、冷静な判断力を…
井上さんが、奪っていく―――。
『もう、放っておいてください』
マンションのガラス扉から向こう側に一台のタクシーが見えた。
私をこの場所から逃がしてくれる唯一の救い、だ。
暗闇の中、仄かに点在するそのライトやオレンジ色の外灯が、やけに胸を締め付ける。
ネオンや夜景、それにこの消えてしまいそうに儚いオレンジ色は、独りぼっちの私にとってこんなにも、切ない。
『今日は本当に、有難うございました…』
視線はあげすにそれだけ言って頭を下げる。
表情こそ見えないものの、私の体から離した両手をそのままに、井上さんは何も言わずに立ち尽くしていた。
(…きっと、迷惑だって思ってるんだろうな)
また泣きたく、なった。
(…弱い、弱い、)
泣いて何がどうなるっていうんだろう。
何を思ったか、歯を食いしばると最後に顔をあげて井上さんのその顔を、しっかりと見た。
だって、もう二度と、逢えないかもしれないから。