イマージョン
千春はいつも自分で握った大きい、おにぎりを持って来る。
日によって1個か2個。

でも大抵3分2位は残して、もういいや。と呟いてゴミ箱にバサッと投げ捨てる。もっと残す日も有る。
体力勝負の仕事なのにフラフラになって、お腹が空かないのか私は不思議に思う。
「前から思ってたんだけど千春少食だよね。途中で、お腹空かない?」
パンをがっつきながら私は聞く。
「少食じゃないよ。お腹は別に…。何か途中で要らなくなっちゃう」

要らなくなる?意味が分からない。

そんな調子で、千春は夕方の休憩時間も煙草だけ吸って何も口にせず涼しい顔をしている。
千春を横目で見ながら、私は変わらず、お菓子を貪り喰う。その後、煙草を吸って、やっと落ち着きを取り戻す。

ふと千春のお腹を見ると、脚だけでは無く、ウエストよりもベルトの方が飛び出して、お腹がへっこんでいて背中と、お腹が、くっついてしまいそううな位、身体が紙みたいにペラペラ薄っぺらい。
それに引き換え私は、相変わらずガツガツパンを喰らいつき、お腹がベルトに乗っかっていて、妊娠しているみたいに、パンパンに膨らんでいる。
便秘体質なのに、普通にお腹が空くし、有り得ない位食べるから、余計に目立つ。

情けない…。
千春が来てから千春の食生活とか、千春が仕事している時の身体のラインが気になって仕方がない。

それでも矛盾していて、千春が、いつもゴミ箱に投げ捨てるおにぎりが気になる。そのおにぎりを、こっそり拾って食べる自分を妄想する。
だって、せっかく自分で握って来たのに、あっけなく捨てられて、おにぎりが可哀想じゃないか。
だったら、私が食べたい。

どうして残すのに、大きなおにぎりを作ってくるの?千春。
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