イマージョン
千春が入って来てから数ヶ月、また新人さんが入って来た。

その子は香と言う名前で、私と同い歳らしく、何だか不良っぽい感じで、周りに中々打ち解け合おうとせず、人間を馬鹿にしている様な、いつも近寄るなオーラを出してる。

同い歳。私は、その子に近づいてみたくなった。
高校生の頃、私は不良では無かったけれど、ちょっとイキがっているガキだった。だから、ちょっと悪い友達と連んでいた。

最初は、どんな子か様子を見ていたけれど、香に近づいてみる事に不安は無かった。

「…煙草、吸うんだ?」
私が初めて声を掛けた台詞が、それだった。

暫く間が有って、
「…あ、うん…」
「あたしも吸うんだ。歳とか関係無いよね」
そう言うと、香は頷いてくれた。

それから仲良くなるのに時間は掛からなかった。 香は同い歳で、千春もハタチで歳が近い。

今まで長続きしなかったバイトを、今の場所で続けていて良かったと思う。仲良く話せる人達に出逢えたから。

香は、段々良く笑う様になった。

香も、千春も、私も、ずっとフリーターで食い繋いで来ている。

また仲間が増えたと思った。フリーターも悪くないなと感じている。

それに、この仕事は時給がいいから、お金に困る事が無くなった。

でも、気になる事が有る。
香も、千春の様にガリガリに痩せている。
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