高校四年生(ラジオドラマ化決定!)



美玲は腰を上げて砂を払い、助けてくれた遷崎にペコリと頭を下げ再び教室に戻ろうとする。


「何で学校に通ってる、学校は諦めろと念押ししただろ。美玲には、聞きたいことが山積みだが、とにかく今からオレと一緒に来い」


「…………」


美玲は遷崎と顔見知り、家出のきっかけを与えた張本人との再会は決してよいものではない。


遷崎が共に来るよう促しても首を横に振るだけで声を発しない。


「オレが、老獪(ろうかい)な権力者共が隠した罪を暴くまでには時間が掛かる。お前が学校へ通う期間には間に合わないんだ、辛い生活するぐらいなら行かない方がいい」


「…………」


長い前髪が風で捲れ、美玲の瞳から一筋の涙が垂れ、唇を噛み締めたのを遷崎は見逃さない。


「美玲、何故何も話さない?」


「…………」


「まさ、か」


不特定多数の人間を相手に取材してきた遷崎は、彼女との僅かなやり取りで異変に気付いた。


「声が出なくなったのか?」


冷たい風が2人の頬を撫でた――。


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