重なる平行線
公園から少し歩いた場所にある、小さくはないレストラン。

私と向かい合って座る水貴とその隣に座る成り行きで来た津坂。

「明太子パスタで」
先に注文している津坂の声が聞こえる。
私はというと、メニューに迷っていた。

さっきまで決めてはいたのだが、直前で心が揺れてしまう。
…主に金銭的問題で。
水貴も注文に悩んでいるみたいだった。

「他に御注文は御座いますか?」
営業スマイルを貼りつけたお姉さんの声。
あまり人を待たせても、悪いし。
「「…じゃあ、」」
重なる2つの声。
「「サラダ付きカレー激辛で!!」」

何…だと…!?
…あえて言わなさそうなものを注文したのに被るとは…!

言っておくが、私は辛いのは好きだが辛すぎるのは味覚が狂うのであまり好きではない。
捨て身の注文です、ハイ。

かくなる上は…!!
「「サラダ少なめご飯大盛で!!」」
シンクロする2つの声が響く。
「「……」」
何か、虚しくなってきたなぁー。

「「やっぱ普通でいいです…」」


「―かっ、かしこまりました」

化粧の濃い目を瞬かせながらも、営業スマイルは定着させたまま仕事をこなすお姉さん。凄いキョドってるよ。
何か申し訳ない。
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