Don't a hero
俺は車のクラクションの音の方向へ顔を向けた。
真っ黒い車がこちらに向かってくる。
ウィーン――――
車が俺の目の前までくると、運転席の窓が開いた。
「こんにちは、賢吾くん!遅れちゃってごめんねー!」
窓から顔を出したのは隆さんだった。
「いや。全然平気です。」
「そう?よかったー!さぁ、行こうか。」
隆さんは人差し指を立て、自分の後ろの席を指差した。
どうやら、乗れという合図らしい。
「お願いします。」
俺は車に乗り込んだ。
車内を見渡すと、相変わらず豪華で、少し圧倒されてしまう。
そして、車は発車する。
「ねえ。賢吾くんって、兄弟とかいるの?」
隆さんは俺の隣にゆっくりと腰を下ろす。
「はい。妹が1人います。」
「へー!そうなんだ…。なんか意外だね。」
「そうですか?」
「うん。なんか一人っ子ってかんじする!」
「よく言われます…。」
「プッ…アハハハ!」
えーーー!?!?
「なんか賢吾くんって、面白いよね〜!アハハハ!」
「は…はあ。」
『この人の笑いのツボはいったい……。』
俺は呆然と隆さんを眺めていた…。