僕らの瞳にうつる世界。
左を向いて、右を向いた時。
ギターで弾き語りをしている少年の後ろ姿が小さく見えた。
橋の入り口の近くにある、背もたれのない木のベンチに座っているようだ。
足音を立てないようにゆっくり近寄る。
夜の春風に暴れる髪を手で押さえ、彼の後ろ姿を見つめながら彼の歌に耳をすませた。
《……〝生きてさえいればいつか笑える〟そう誰かが教えてくれた
だから、踏み出す勇気を、辛い夜を越える強さを僕にください》
そこで歌とギターが止まった。
明らかに途中。
どうしてやめちゃったの?
――…もっと、聴いていたいのに。