君に触れたくて…





「あ…大丈夫だよ!」



「ごめんな」




謝りながら傷の手当てをする理音は、さっきの彼とは全く違った。




「ねぇ理音」



「ん?」



前みたいに…仲良くできないの?



「あたしたち、昔には戻れないの?」



「……無理だろ」




冷たい現実が突き付けられた。




「幸弘もさ、仲良くしてるの見て、いい気にならないだろうし」



「別れたの」



「…知ってる。でも、なんで?」



「それは…っ」




“理音が好きだから”




「…っ、すれ違…い」



「…へぇ」




“好き”


たった2文字の言葉を言えたら、どんなに楽になるだろう。


“好き”


この2文字の言葉を聞けたら、どんなに幸せだろう…。



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