君に触れたくて…




え…
何で泣いてんだよ。


そんなに消毒が痛かったのか…?



俺は少し、秋桜から離れた。




「…なぁ、何で泣いてんの」



「…ッ…ヒック…ぅ…」




秋桜は一言も喋らない。




「はぁ…泣いてちゃわかんねぇだろ?」



「…ぅぅ…」



「そんなに…俺が嫌か…?」




秋桜がパッとこっちを見る。


俺は無理矢理、笑顔を作った。




「……っ」




秋桜から首を横に強くふる。



その瞬間、目の前にいた秋桜が消えた。




「…え…おい…」




俺に抱きつきながら泣きじゃくる秋桜。




「…グス…ッ…ぅヒック…」




抱き締めようと思ったが、頭の中に梨加の顔が浮かんだ。




「………っ」




下唇を噛みしめる。




< 294 / 343 >

この作品をシェア

pagetop