君の左のポケットで~Now&Forever~
わたしは、手を合わせて、お母さんに伝えた。


「ナナ?」


長くそうしていたわたしを、レンは少し不思議そうに見ていた。

もう一度ふたりで手を合わせて、お母さんのお墓を後にした。



何も食べていなかったわたしたちは、近くのコンビニでお弁当を買って、

神社の境内にあるベンチに腰を下ろして、少し休んだ。


大きな木に囲まれた境内はひっそりとしていて、時々、散歩をするお年寄りがわたしたちの前を通り過ぎた。

陽はゆっくりと傾いてきていて、木々の隙間から向こうに広がる空が、オレンジ色に染まり始めている。


くっと伸びをしたレンは、黙ったままそっと身体を横たえて、わたしの膝の上に頭をのせた。

ちょっと見つめ合って、すぐに目を閉じるレン。

頬に、オレンジの光が揺れている。

赤く透ける髪が、時々風に揺れる。


何も言わないレンの髪を撫でで、片方の手でレンの肩に触れる。

レンはその手をそっと包んで、じっと目を瞑っていた。


長いまつげ。

形のいい鼻。

きゅっと閉じた唇。

レンの綺麗な顔は、光に照らされて、ますます綺麗で、

そして、どんな時の顔よりも、切なく見えた。



レン。

もう、苦しまないで。


わたしは、優しく、優しく、レンの髪を撫で続けた。




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