Dear my Dr.
「美波、着いたよ」

「ありがとう」

そっと頬をなでられる。

切ない。

「ん?どした?」

「…迷ってないからね?」

「あぁ、わかってる」

悠ちゃんの本心が知りたい。

好きだなんて言ってくれないけど、ちょっとは好きでいてほしい。

私は好きだけど…

それも言えない。

言っちゃだめな気がして。

だから、悲しいけれど、これは政略結婚なんだって言い聞かせる。

でも、せめてキスしていいよね?

悠ちゃんの袖を引っ張って、そっと目を閉じる。

柔らかくて心地いいキス。

悠ちゃんらしくて優しい。

唇が離れると、悠ちゃんは言う。

「じゃあね、おやすみ」

その声が好き。

髪をなでてくれる手も、指も。

悠ちゃんのこと全部。

本当に私のものにしていいの?

あの時好きだった彼女に、あげられなかったもの全部。
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