どうしょうもねぇくれぇ、好き。
こんな時に自分の事を考えるなんてどうかしてる。
好きなら、迷わず瑞季に手を伸ばせば良かったのに。
俺は
「…っ。」
瑞季に手を伸ばす事をしなかった。
何で瑞季に手を差し伸べなかったのか。
これを言ったら言い訳だ。
でも…――
瑞季に、触れたら俺が駄目になってしまうような。そんな、気がした。
「渉はそれでぃぃじゃない。私も、あの女も居るんだから。
渉は結局、私だけを見てくれないじゃない!キスマークだって付けてくれなかったじゃない!
授業の時だってずっと私じゃなくてあの女を見てたじゃない!」
はぁっ、はぁっ、と息を取り乱しながら次々と出てくる言葉に言葉を失う。
俺は瑞季の言葉を思い出しながら首を傾げる。
俺が、瑞季を見てなかった?
瑞季の他に思ってる女が居る?
俺が瑞季以外の女を見てる?
…バカじゃねぇの?
沸々と怒りの感情が込み上げてくる。
それを煽ったのは
「どうせ、私も他の女と一緒の扱いなんでしょ!?それなら、要らない!必要ない!
今更、私が他の男に取られそうだからって告白なんてしてこないで!」
紛れもねぇ瑞季だった。