どうしょうもねぇくれぇ、好き。
中村が羨ましい。
今は触れる事の出来ねぇ瑞季の全てを一つ一つ、思い出す。
しなやかな、艶のある黒い髪の毛。
強く触れたら壊れてしまうんじゃねぇのかと思ってしまう、あの体。
一度味わったら止められねぇ柔らかい唇。
あの、瑞季独特の食べたくなるような甘い匂い。
虜になる瑞季の少し高い声。
全てが俺を魅了して離さねぇ。
「…。」
俺は未だに、瑞季が好きだ。
なのに…
「えー、中村くんの家に泊まりに行くの?」
「ちょ、声大きい!」
そう確信したのに、俺を暗闇に突き落とすのは、今まで俺が素直に行動してなかったせいなのか。
それは分からねぇけど。
「…っ、」
胸が無性に痛くて、苦しいのは間違いじゃねぇと思った。