龍とわたしと裏庭で【おまけの圭吾編】
情けなくもヘコみながら、僕は志鶴を探しに階段を下りた。


今日の志鶴は、彩名のアトリエにいた。


「ただいま、圭吾さん」

人の気も知らないで、志鶴は笑顔で僕を迎える。

「どう? どう?」


『どう?』――って、つけマツゲ?

ああ、目の回りに何か細工をしたらしい。


「美幸にやってもらったの!」


僕は笑いを堪えた。

まるで母親のメイク道具で遊ぶ子供みたいだ。


「かわいいね」


志鶴の顔がちょっと曇った。


彼女が聞きたい台詞は知っている。

でも、言わない。

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