片恋★パンドラボックス
でも、それはきっと当たり前のこと。



彼氏とおにーちゃんなら、彼氏を優先させるのが普通。



だから、おにーちゃんがそんな風に言うのは、あたしに気を使ってるとかじゃなくて、本当にごく当たり前のことだからなんだと思う。



でも…。



「じゃ、遅くならないように帰ってこいよー。」



「あっ!ちょっ、待って!」



「ん?」



カチャリと鍵を外し、自転車に跨るおにーちゃんへと手を伸ばしてしまうのは、やっぱり寂しくて仕方がないから。



「あ…」



「ん?」



「あの、」



「ん?」



「えと、あの、ね…」



「うん。」



「優斗……今日、バイト…。」



ポツリと呟いたあたしは、ギュッとおにーちゃんの腕を掴みながら、おずおずと顔を上げた。

< 92 / 205 >

この作品をシェア

pagetop