竜を狩る者
「綺麗事かどうかなんざ二の次だ」

ようやく足を止め、ローゼンは僅かにサンの方を見る。

「お前は根本的な事が何も分かっていない。帰れ。そして狩猟者なんざやめちまえ。お前みたいな坊主は、竜種の餌になるのがオチだ」

その言葉を最後に、ローゼンは二度と振り向く事はなかった。

「……っ」

だがサンは諦めない。

自分を拾って名前をつけ、育ててくれた神父。

その教会で帰りを待っていてくれる双子の弟と妹。

彼らがいつも笑って暮らせる世界を作りたいから…。

彼には彼なりの理想がある、夢がある。

綺麗事だろうが何だろうが、皆が幸せに暮らせる世界の方がいいに決まっているじゃないか!

そこだけは譲らないし譲れない。

同行が許されないのならば、勝手についていくまでだ。

サンは必死に、峡谷の険しい道を歩くローゼンの後を追った。

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