竜を狩る者
ノエルの父親もまた、名の知れた狩猟者だった。

この大陸に開拓民が上陸し始めた黎明期。

竜種というこの大陸独自の生物が生息し、他の動物を蹂躙している事を知り、真っ先にそれらに立ち向かう事を決めたのがノエルの父だった。

並の剣や武具では大きな体躯を持つ竜種には対抗できない事を知り、より大型の武具を鍛えて立ち向かう事を考案したのもノエルの父親。

彼女の父親は、現在この大陸で常識となっている竜種討伐のノウハウを築き上げた第一人者でもあったのだ。

…その父も、今はもういない。

ある朝いつものように竜種討伐に出かけ、そのまま帰ってこなかった。

その日に限って、愛用の巨大な片刃剣ではなく、別の武器を持って出かけた。

それが不幸に繋がったのか。

幼いノエルにはわからない。

しかし、『この続きはノエルが受け継いでくれ』と。

その為に片刃剣を遺して逝ったのだと。

彼女はそう信じていた。

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