竜を狩る者
その動きは、病に冒されているとは思えないほどに敏捷だった。

素早く弓を手に取り、矢を番え、射る!

放たれた矢は風の如く白煙を貫き。

「っ!」

その中に紛れた巨大な物体に命中する!

轟く咆哮、うねる長大な体。

「…久し振りですね」

憎悪と歓喜、ない交ぜになった表情を浮かべたラムダの顔は、どこか狂気さえ感じさせた。

…立ち込める白煙の中から、ヌッと姿を現す三つの鎌首。

その体色は翡翠。

毒と火のブレスを吐き、この地獄のような火山帯に生息している悪辣な竜種とは思えない程に、美しい鱗を身に纏っていた。

ズメイ。

ラムダの10年越しの決闘が今始まる。

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