誠ノ桜 -桜の下で-



意外にも簡単に離れた為、凜は背を向ける。


「…ありがとう。じゃあ、ね」


返事は、言わなかった。

言っても嘘を吐いただろう。







凜は振り返る事なく、会津藩へと戻った。









――…


「姫、よく戻った!お帰り」

「…ただいま、です。松平様」


いつもと変わらない松平に、凜は微笑を浮か
べた。

だが同時に、帰ってきたのだという実感が沸
いてきた。


「姫、明日は私と共に外で食事などどうだ?」

「また無茶な……でも、いいですよ」


少しだけ、昔を思い出した。

凜が来たばかりの頃は、よく松平と食事をし
たものだ…。


「凜狡い!俺も連れてってくださいよ」

「松平様っ、僕も行きたいです♪」

「じゃ…俺も」


宮部を筆頭に、犬山や氷上も乗っかった。


「はははっ、いいとも」


懐広く、松平は簡単に受け入れた。

こうなれば、松平の護衛付き外食みたいだ。



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