『箒星の組み紐』
「いやいや、携帯のゲームに夢中になっていたから、あっ、もうこんな時間だね」

嘘も方便ってやつか……今の俺は嘘にもならない下手糞な嘘をついているなあ。

目の前の女性は、ちらりと画面が真っ黒な西村の携帯を見ながら、少しドキッとした気持ちになった。

「ああ、でも、終電も近いし、もう遅いよね。あなたといっーぱいお話をしたかったんだけど、でも、ここに来てくれたからそれだけで……今夜はあり……」

西村の言葉を遮るように、

「あたしは鮎川希といいます。高校三年の十八歳です」

とノゾミは西村に自己紹介した後、軽く会釈をした。
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