《短編》夏の雪

「何だ、ふたりでどっかに消えたのかと思ったら」


戻ってきたあたしと修司くんに対する雪ちゃんの開口一番はそれ。



「はい。雪のコーラは没収で」

「わー! 嘘だって! マジで感謝してます、修司さま!」

「わかればいい」


そんなやりとりを見つめながら、大爆笑のあたしと彩音。



へこへこしながらコーラのペットボトルを受け取り、雪ちゃんはそれを一気に喉の奥へと流し込む。

昔、おばあちゃんに『炭酸ジュースを一気飲みすると体が爆発するよ』と念を押すように言われていたあたしは、ちょっとビビった。


いや、別にそれを信じてたからとかじゃないけどさ。



「夏美ちゃんはオレンジジュースじゃないんだね」


不意に雪ちゃんの顔が向く。

初めてまともに話し掛けられた気がする。


それよりあんた、あたしの名前覚えてたのか。



「ナツミカンだから、とかいうギャグが言いたいなら殴るよ」

「うはは。バレてんじゃん」


お調子者。

それがあたしの中での雪ちゃんのイメージ。


ちょっとうざい。



「うおー! 花火だ、花火!」


買い物袋を漁り、それを発見した雪ちゃんの目が輝く。

ちょうど陽も沈み切った。



「やろうぜ、今すぐ!」

「わーい! 花火大好きー!」


子供か、お前らは。

と、雪ちゃんと彩音に向かって心の中で毒づくあたし。
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